羊と鋼の森

 

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

 

この映画を一か月ほど前に、妻と一緒に見ました。

前評判がよかったことと妻のお目当ての山崎賢人が主演であることが、鑑賞の動機づけとなりました。

とても良い映画でした。見終わった後、すぐに原作本を買って読んだくらいです。

どちらかというと妻に引っ張られて、映画館に行ったような私でしたが、今では誘ってくれて感謝しています。

静かな映画です。ピアノの音が主人公の心の中の心象風景としての森に響く、というのがこの作品のタイトルをも表しているのですが、私はピアノ一音が水に落とした石の波紋のように感じられました。このように書くと、ピアノが好きな人とケンティー目当て以外の人にとっては、退屈なのではと思うかもしれませんが、全然です(強い否定)。個性が強い人物が登場するわけでもなく、ドラマティックな展開があるわけでもないのに、なぜこれほどまでに映画に引き込まれるのでしょう。それは、調律師の話ではあるけれど、みな共通して持っている心の中の風景の中を探訪している気持ちになるからではないでしょうか。主人公にとっては、それが羊と鋼イコールピアノの森であったのでしょう。私たちだって、それぞれの森を持っています。いえ、森とは限りませんが、心の中に広がる風景、いつでも帰ることができるイメージがあるはずです。それを思い出させてくれる映画です。脚本、演出が素晴らしいことは、もちろんですが、配役がとても素敵です。上白石姉妹のファンになってしまいました。三浦友和、いいですねえ。鈴木亮平、嫌みがないですねえ。もちろん、山崎賢人も。彼でなければ、この映画の成功はなかったでしょう。

原作を読んだことは、先ほど書きましたが、ストーリーに大きな違いはなく、補完的な(原作が先なので、変な言い方ですが)、役割を果たしてくれました。原作と映画、どちらを先に体験したかで人により違いはあるでしょうが、私は映画のほうが好きです。

ぜひ、ご覧ください。