冒険者たち
このタイトルを見て、何を思い浮かぶかで年齢がわかる気がします。一つ目
は、ロベール・アンリコ監督のフランス映画で、1967年公開。もう一つ
は、斎藤惇夫原作のもので副題は、ガンバと15ひきの仲間で、1982年発
行。両方とも、私にとって思い入れのある作品ですが、今回は2つめの方を取
り上げます。
冒険者たちというより、ガンバの方が通りがいいかもしれませんね、私のよう
な50代の者には。このガンバの物語ついては、この原作のもの、東京ムー
ビーのテレビアニメーション(ガンバ:野沢雅子 ノロイ:大塚周夫)、そし
て3年ほど前に劇場公開となったアニメ映画が有名でしょう。それぞれ、若干
設定が違っていたりするのですが、一つの原作をモチーフとして一つの作品と
してとらえることをお許しください。(特に原作者さんに対して)
目的のために仲間ができ、その中で様々な人間模様が描かれます。また、テレ
ビアニメでの悪役のノロイの怖さは、子ども心にトラウマになったという話は
よく聞きます。大塚周夫さんでしたね。最近の映画版では、野村萬斎さんが声
を当てていて、あのねっとりする声も凄みがありました。やはり、悪役は存在
感と魅力がなければいけません。登場人物がそれぞれキャラが立っていて、と
てもいいんですね。私のお気に入りを一つあげるとしたらボーボです。ガンバ
の最初からの友達なのですが、大食いで太っていて、動作がスローモーで端か
ら見ていてイライラするという、よくあるタイプです。これは、映画版の一場
面だったと思いますが、ノロイ一族との決戦を前に、ガンバたち、島ネズミた
ちが戦々恐々と準備をしているとボーボが楽しそうに働いているのです。それ
を見た仲間が、なぜそんなにうれしそうなんだと問われてボーボは答えます。
「だって僕、今まで人の役に立ったことなかったけれど、今このとき、役に
立ってると思うんだもの。」その言葉を聞いて、じわっときました。ボーボの
これまで送ってきた日々やいろいろな思いを想像できました。ボーボのような
人いますよね。こういう人ほど、そう思っているんです。私自身が同類なの
で、感情移入してしまいました。ボーボが最後の力を振り絞って行動するシー
ンは、ぼろぼろ泣いてしまいました。
最後、戦いが終わりましたが、味方の犠牲も多く、ガンバは一人むせび泣きま
す。「俺、海が見たかっただけなのに…。」そうなんです、町ネズミのガンバ
は見たことがない海を見ようと、冒険をスタートさせたのです。それが、こん
な大事になるなんて、という気持ちでしょう。ここまで書いていて、気づいた
ことがあります。最初に書いた、ロベール・アンリコ監督同名の映画です。最
後の最後、敵を全滅させた後、犠牲になった親友のアラン・ドロンをみとり、
両手で顔を覆い号泣するリノ・バンチュラを俯瞰カメラでとらえます。ガンバ
も同じ気持ちだったのでしょう。斎藤惇夫さんは、このシーンを意識したのか
もしれませんね。