高名の木登り

徒然草にあるエピソードです。

木登りの名人が高木の剪定をする弟子を指導しているところを見ていた筆者

が、名人に聞きます。「いかにも危険と見える高いところでは声をかけず、軒

の高さぐらいに下ったときに『気をつけろ』と注意したのはなぜですか。」そ

れに答えるには「人は、もう大丈夫だと思った時に、油断して失敗するもので

す。」

 

高校の古典の教科書にあったもので、確かそういう内容だったと思います。座

右の銘にしているにもかかわらず失敗ばかりしている私です。この高名の木登

りに似たエピソードを、若い頃にタクシーの運転手から聞いたことがありま

す。運転免許取り立ての私が、「いつ事故に遭うのじゃないかと、びくびくし

ながら運転しています。」というと「そう思っているうちは安全だ。慣れてき

て、自分の運転を過信する頃が一番あぶない。」と話してくれました。

 

そう思うと「初心忘るべからず」という言葉が思い出されます。取り組むこと

を志した時の気持ちを常に持ち続けよ、という教えは、今でいう危機管理意識

を述べたものなのかも知れません。その中で、自己管理がなかなかできないの

が現状です。ですから時折、呪文のように「高名の木登り、高名の木登り」と

つぶやいて、自分を戒める私です。