川端康成:化粧(「掌の小説」より)

川端康成の小説は、長編、中編、短編に加えショートショートというべき掌編

があります。その中の一編がこの化粧で、ページ数も2ページちょっとです。

葬式場の化粧室での光景です。白いハンケチでしきりに涙を拭いている17,

8歳の少女を作者は見ます。きっと化粧室には、化粧をしに来たのではなく隠

れて泣きに来たのだろう、と作者は考えます。その後、思いがけなく小さな鏡

を持ち出し、鏡ににいっと一つ笑うと、ひらりとその場を出て行ってしまった

のです。そして最後に「私には謎の笑いである。」でこの掌編は締めくくられ

ます。

 

昨日、日本テレビの番組で「女が女に怒る夜」というバラエティがあり見てい

ました。文字通り、こういう女いるよね、嫌だよねと女が女をこき下ろす内容

です。私も、あるあると思いながら笑ってみていました。と同時に、女性には

女性しかわからない感性というか感覚があり、男にはわからない世界があるの

だと言うこともわかりました。

 

「化粧」に登場する若い女性について、男性である作者からすると謎の笑いと

写ったものも、女性からすればいくつかの思考パターンをすぐさま提示してく

れるかもしれません。たとえば、これからみんなのところに戻る前に気丈に涙

を見せまいとあえて笑いを作った。たとえば、泣くことで自分に酔っていた少

女が一息ついて冷静になり素の状態に戻った。たとえば、作者が見ていること

に気がついていて、一種の媚態を示した。しかし、どれも男の感性からの意見

ですので、女性からすると一笑に付されるかもしれません。ただ、本当のこと

を知りたいとは思いません。男にとって女は永遠に謎の存在の方がいいからか

もしれません。そう思う男は、私だけではないと思いますが。

 

掌の小説 (新潮文庫)

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