イエス:危機

タイトルに書くと、キリスト教なのかプログレッシブバンドかよくわかりませ

んね。もちろん、これまでの流れで後者の方です。私のイエスの初体験は、高

校時代友達が貸してくれた「危機」のレコードによってでした。ロジャー

ディーンのイラストとジョンアンダーソンのハイトーンボイスでいっぺんに魅

了されてしまったことを思い出します。内ジャケットに描かれた幻想的な絵

が、世界の果てをイメージしているようで、ずっぽりと浸ってしまいました。

この頃のイエスがある意味最盛期だったといえるでしょう。ところで、この時

代のプログレッシブロックの邦題の付け方は秀逸ですね。Close to the edgeを

危機とした感性には脱帽です。歌詞の日本語訳を読むと、相変わらず何を言っ

ているのかよくわからないジョンアンダーソンの作品だなと。直訳すると先端

の近くとなるのでしょうが、文脈からしても内容がよくわかりません。でもい

いんです。世界の果てにあるのがなんであれ、そこに不安定さがあるのは当た

り前なことなのですから。ここまで、このアルバムのことを述べてきたので、

最後まで「危機」のみでいきたいと思います。このアルバムは、何度もリマス

ター化され、その都度買っていた覚えがあります。タイトル曲が川のせせらぎ

の音で始まり、終わるという構成です。終わりのせせらぎはゆっくりとフェー

ドアウトしていきます。あるとき、ヘッドフォンで聞いていて、その箇所に来

たとき、フェードアウトの終わりが若干早いCDがありました。ほんの数秒の

話ですが、聞いてる方はショックでした。平和を象徴する川のせせらぎがオー

バーに言えば途中でカットアウトされたのですから。うーむ、危機かぁ、と

思ったものです。どの時代のどのリマスターかは、定かではありません。その

他のCDは、すべて違和感のないフェードアウトで終わっているので、カット

ミスなのかもしれません。意図的ではないにしろ、とても興味深く思ったもの

です。最後に蛇足です。A,B,W&Hの来日公演に行ったとき、運良く最前列で、

ジョンアンダーソンと握手する機会がありました。大きく、温かい掌でした。

 

危機

危機