エマーソン、レイク&パーマー

久しぶりにEL&Pを聞きたくなり、自分で編集したCDを作りました。

3人がバリバリやっていた頃大好きで、新作、旧作が出るたびに買っていまし

た。しかし、今はカールパーマーだけが存命とは。確かに、病的な一人と太り

すぎの一人だったから、一番健康体に見える一人が生き残っているのはうなず

けます。インタビューでキースエマーソンが難解なプログレッシブロックと問

われ、不思議そうにこんなわかりやすいロックはないと答えていたのが印象的

でした。確かに、他のプログレもそうですが、歌詞はちょっとわかりづらいの

が多いですが、音自体は明快そのもの。金属的なキーボードと疾走感あふれる

ドラムス、そして叙情性いっぱいのボーカルとギターの融合が見事でした。私

はこれまで何度も、編集CDを作ってきましたが、必ず入れていたのは、石を

とれと聖地エルサレムでした。その時の気分で、ハードに偏るときも、ソフト

な路線でいくときもありましたが、この2曲はマストでした。構成力という

か、足しても引いてもいけない内容というか、完成された楽曲のように思われ

るのです。キースエマーソンがクラシック大好きなもので、その影響がEL&P

の曲全体に現れています。キースとグレッグレイクはあまり仲が良くなかった

ようですが、その緊張感が最盛期の彼らの作る楽曲に見られ、聞く者をわくわ

くさせてくれました。それがライブ盤でははっきりと現れています。彼らをス

ターダムにのし上げた「展覧会の絵」は実況録音でした。当時の海賊版対策と

して発売されたと言うことでしたが、スタジオ録音であのストイックさを出す

ことは難しかったのではと思ってしまいます。後年、スタジオ再録がなされま

したが、私は最初のものにインプリンティングされているので、問題外でし

た。

ライブ盤と言えば、レディーズ&ジェントルマンを良い音で聞きたいもので

す。発売されたときは、私が高校生の頃でLP3枚組で5千円以上したもので

す。内容が既発作品のベスト盤的であこがれのLPでした。今は、何度も再発さ

リマスタリングされていますが、もう少しすかっとした音にならないものか

と思います。Oh,Luck man he was was was was…とエコーがかかるところを

堪能したいものです。どうでもいいことですが、最後に今回編集CDの曲をあ

げておきます。

①Take a Pebble ②The Endless Enigma(part1) ③The Endless Enigma(part2) ④From The Beginning ⑤Trilogy ⑥Hoedown ⑦Jerusalem ⑧Still you turn me on ⑨C'est la vie ⑩I believe in father Christmas ⑪Watching over you ⑫Peter Gunn Theme ⑬Romeo and Juliet ⑭Touch and go

 

From the Beginning

From the Beginning

 

 

   

川端康成:化粧(「掌の小説」より)

川端康成の小説は、長編、中編、短編に加えショートショートというべき掌編

があります。その中の一編がこの化粧で、ページ数も2ページちょっとです。

葬式場の化粧室での光景です。白いハンケチでしきりに涙を拭いている17,

8歳の少女を作者は見ます。きっと化粧室には、化粧をしに来たのではなく隠

れて泣きに来たのだろう、と作者は考えます。その後、思いがけなく小さな鏡

を持ち出し、鏡ににいっと一つ笑うと、ひらりとその場を出て行ってしまった

のです。そして最後に「私には謎の笑いである。」でこの掌編は締めくくられ

ます。

 

昨日、日本テレビの番組で「女が女に怒る夜」というバラエティがあり見てい

ました。文字通り、こういう女いるよね、嫌だよねと女が女をこき下ろす内容

です。私も、あるあると思いながら笑ってみていました。と同時に、女性には

女性しかわからない感性というか感覚があり、男にはわからない世界があるの

だと言うこともわかりました。

 

「化粧」に登場する若い女性について、男性である作者からすると謎の笑いと

写ったものも、女性からすればいくつかの思考パターンをすぐさま提示してく

れるかもしれません。たとえば、これからみんなのところに戻る前に気丈に涙

を見せまいとあえて笑いを作った。たとえば、泣くことで自分に酔っていた少

女が一息ついて冷静になり素の状態に戻った。たとえば、作者が見ていること

に気がついていて、一種の媚態を示した。しかし、どれも男の感性からの意見

ですので、女性からすると一笑に付されるかもしれません。ただ、本当のこと

を知りたいとは思いません。男にとって女は永遠に謎の存在の方がいいからか

もしれません。そう思う男は、私だけではないと思いますが。

 

掌の小説 (新潮文庫)

掌の小説 (新潮文庫)

 

 

グッドドクター:自閉症と言うこと

グッドドクターも4回目。それぞれの配役のキャラクター設定もはっきりとわかる

ようになってきており毎回見るのが楽しみです。最初は、奇異に感じていた主人公

の言動にも慣れてきた感じがあります。

 

今回は、慣れの大切さと言うことを考えたいと思います。私たちは、障害を持って

いる人たちにどう接して良いかわからず戸惑い、時には距離を置こうとします。そ

れは相手のことがわからず、わからないことが時として恐れを抱いてしまうからで

しょう。理解の範疇であれば、対応可能と考えますが、「わからない」事には、ど

う対応して良いかむずかしいですものね。今回、子どもに人気のある主人公に何気

なく「あの先生自閉症なんだよ」といいます。子どもですから、自閉症の意味はわ

からないでしょう。でも普段の様子から、ほかの大人とは何かが違うと言うことは

わかります。ただその違いで主人公に嫌悪感を持ったり、排除したりするような感

覚はありません。逆に主人公の誠実さを好ましいと思っているのでしょう。それ

は、最初は「変な先生」と思っていたとしても、毎日生活していく中でその「個

性」に慣れ、なんとも思わなくなって言っていると言うことでしょう。

 

自閉症など発達障害を持つ人は、例えば音に敏感で特定の音に強い嫌悪感を持った

り、身の回りの整理が苦手だったり、手順通りに行わないとパニックに陥ったりす

る場合があります。解決の手立てを周りが保障してあげれば、本人は不適応なく生

活が送れる場合がほとんどです。この周りの保障ですが、これが慣れだと思うので

す。あの人は、これが苦手なんだ。今苦しんでるんだ。ということを、慣れの中で

想像することができるようになれば、つきあい方も変わるような気がします。今の

時代、発達障害を持っていたり、精神疾患を抱えていたりする人が増えています。

こういう私だって、調べれば何らかの傾向を持っているのかもしれません。そうい

う発想で、共生社会というものを考えていく事は大切だなと考えます。この番組を

見ていると、いろいろなことを考えさせられます。来週も楽しみにしています。

山月記

中島敦の名作です。私が初めて読んだのは、高校の国語の教科書でした。

最初漢文調で読みにくいなと思っていましたが、途中からぐいぐい引き込まれまし

た。主人公の親友が人食い虎になってしまう物語です。若い頃は秀才でならしてい

た友は、プライドが高く人と交わらず、努力することを忘れ、とうとう発狂し遁走

してしまった。主人公が旅の途中で、偶然虎と化した友と出会い会話をする場面で

す。友は言います。

 

今までは、どうして虎などになったかと怪しんでいたのにこの間ひょいと気がついてみたら、どうして以前、人間だったのか考えていた。

 

ジキル博士とハイド氏」を思い出させるような台詞です。セルフコントロール

できない恐怖を表しています。そして、なぜそうなったのかを分析してこう言いま

す。

 

臆病な自尊心と尊大な羞恥心

 

もともとあった才能を磨くことをせずにいたのは、人と交わったり教えを請おうと

することに自尊心と羞恥心があってできなかった。あいつは俺よりも才能がないと

思っていた連中がどんどん出世していくのに、自分はずっと同じところにとどまっ

ている。それに耐えられなくなったときに、虎に変身してしまったというものだ。

 

この物語はとても教訓的で、当時高校生の私に衝撃を与えました。では、私は、虎

にならずにすんだかというと、ハイド氏になっていないかというと残念ながら、答

えはノーですね。人は弱いものです。プライドもあれば欲望もある。セルフコント

ロールできているつもりであって、実はそうではなかったことが後でわかるものです。

 

時折、この山月記を読み、自分がどこまで虎になっているか再確認するのです。自

分が人間であった記憶を失わないように。

 

 

 

羊と鋼の森:原民喜の言葉

この作品には、印象的な台詞がたくさんあって見る者、読む者を楽しませてく

れます。とりわけ、主人公が師と慕う名調律師の板鳥がいう原民喜の言葉が、

鮮明です。

 

明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体

 

これは板鳥が主人公外村に「めざす音」を問われたときの答えです。多分、作

者の宮下奈都さんが座右の銘にしている言葉なのでしょう。このままの文章

で、小説が終わるまで3回も出てくるのですから。確かに、文学論だけでなく

すべてのことに共有する何かを湛えている内容だと思います。原民喜は、この

中で3種類の文体について言及しています。それぞれの内容は、前半と後半で

成り立っています。一見、相容れないような内容ながら、その二つがあること

で言わんとすることが深く染みいります。物事の事象すべてにいえることかも

しれません。また、人格もその中に含まれるかもしれません。私は、この言葉

をこの作品で初めて知りましたが、文字通り、初めてなのになぜか懐かしい気

がします。

この作品自体、ピアノ調律の話で終わっているわけではありません。みなそれ

ぞれ何かを抱えながら、生きている。端から見ると、それに気づかないけれ

ど。でも結局、その抱えているものは、自分の中で折り合いをつけ、答えを出

していくしかない。この作品のテーマは、そこにあると勝手に思っています。

そして、映画で表現された世界は、まさしくこの原民喜の言葉を具現化したも

のであると感じました。

 

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

 

漢字検定2級

思うところがあって、漢字検定なるものに初めて挑戦しようと思います。

それもいきなり2級という、無謀というか、もの知らずというか。解説本によ

ると5級が小6までの学習内容、4級が常用漢字1300字、3級が常用漢字

1600字、準2級が常用漢字1940字、そして2級は、すべての常用漢字

となっています。

 

自分はこの8月で59歳になります。その自分の日本語(と言っていいでしょ

う)の理解度を漢字検定で測ってみたいと思うのです。実は根拠のない自信が

あるのです。本を読むことが好きで、書くことも嫌いじゃないので、多少は漢

字を知っているのではないか、というものです。そのミリ単位で高くなってい

る鼻っ柱をへし折られるか、それともセンチ単位で伸びてしまうか、興味があ

るところです。

私は、漢字を含め言葉をたくさん知っていても、適切に活用できなければ意味

がないと思っています。ですからクイズ番組で高得点を獲得するようなことが

目的ではなく、人とのコミュニケーションに生かされ社会生活に貢献できるよ

うでなければなりません。表現力活用のためのツールとしての豊富なボキャボ

ラリーだと思っています。

もう一つ、日本人として日本語の奥深さに触れたいと言うことがあります。奥

深さ、言葉を換えると美しさと言うことになりましょうか。たとえば、挨拶と

いう漢字ですが、解説によると、二文字の漢字はいずれも「せまる」という意

味があるのだそうです。挨拶は人にせまる、と考えるとこれまでの間接的なイ

メージを覆し、よりダイレクトなものとしてとらえられます。これこそ、対人

関係のヒントになりそうなエピソードです。

 

これから勉強をしていく中で、おもしろい発見があればお伝えしていきたいと

思います。

 

 

下重暁子:極上の孤独

最近話題となっているこの本を読みました。著者の下重暁子さんの生き方から

学ぶことが多い本です。本の中にこうありました。

 

「淋しい」と「孤独」は違う。話し相手がいないから淋しくて、孤独。そんな安直なものではないはずである。淋しいとは一時の感情であり、孤独とはそれを突き抜けた、一人で生きていく覚悟である。(中略)淋しいといえる段階はまだまだ甘い。淋しさを自分で解決しようという気はなく、誰かが何とかしてくれないかと他人に頼っているからだ。

なるほどと思いました。

私自身を振り返ると、孤独を愛する人間だとずっと思っていました。しかし、

生活が変わり、一人暮らしを始めると、どうにもやりきれない気分がします。

結局は、周りに人がいることに甘んじて一人になりたいと嘯いていた、単なる

淋しがり屋だったことに恥ずかしながら今気がついています。それは、私だけ

ではなく皆そうなのかもしれません。

 

下重さんのような生き方はなかなかできません。人を頼りにせず孤独を恐れず

楽しむ、という生き方は。しかし、こうも考えます。今の時代人とのつながり

が希薄になっているからこそ、SNSでのやりとりを最重要視する人たちが増え

ている。たとえ表層的なつきあいといえど、人間は一人では生きていけない生

き物ということがわかる。ならば、もっとダイレクトに人にぶつかり、生身の

つきあいをするべきだ。そうすれば、連帯も孤独も両立できるのでは。

 

そう言っているようにも感じます。私には、孤高の生き方はできませんが、で

も人とできるだけフェイストゥフェイスで関わり、来るもの拒まず去る者追わ

ずの精神でいきたいと思います。

 

極上の孤独 (幻冬舎新書)

極上の孤独 (幻冬舎新書)