ビロウな話で恐縮です日記

昨日の雷雨はすさまじく、自宅のケーブルTV関係にも少なからず影響を与えま

した。さて、今回紹介するタイトルの本は、三浦しをんさんの日記というか

エッセイです。下段に本文の脚注を入れる体裁など、80年代の田中康夫氏の

ペログリ日記を彷彿とさせます。あれほど、微に入り細に入りねちこくありま

せんが。

 

三浦さんの本は、これまで「風が強く吹いている」と「舟を編む」を読みまし

た。読めば読むほど引き込まれていく内容に、読書の面白さを味わわせてくれ

ました。このエッセイは肩の力を抜いたもので、楽しく読めます。例えば。

 

2日はもちろん箱根駅伝を見るのだ。テレビで。そう、テレビで!もう寒風吹きすさぶ芦ノ湖にいかなくていいし、録画したビデオをねちこく再生してデータをとったりしなくていいんだ!感涙にむせぶ。

これは、先の「風が強く吹いている」執筆のための取材した日々を想起された

ものでしょう。なんとなく裏話っぽくていいですね。また、他の場面で、日本

語の使い方にこだわりを見せるエピソードが繰り返し出てくるところは、さす

がに舟を編むの作者と思わせてくれます。

 

ところで私は、筆者の三浦しをんさんをずっと男と思い込んでいました。風が

~を読んでいたときはずっとそうでした。舟を~を読んでいた時に、女性であ

る情報があり、そうなんだ、と思いました。今から思えば、ネットで検索すれ

ばすぐわかることなのですが。ところが、今回のエッセイは表紙画は中村明日

美子さんのもので男性とおぼしき人物が、筆が進まない様子が描かれていま

す。そして、まえがきに「俺の美意識が」と書いてあり、中身も下品ではない

下の話があるなど、あれ、女性だったよねと、この時初めてネット検索した次

第です。そして改めて思いました。いいなあ三浦しをん、と。


この本を、娘に進呈しようと思います。おたくでミーハーでコミケ出品用の作
品の締め切りに青ざめる彼女なら、爆笑しながらこの本を愛でてくれるでしょ
う。

 

ビロウな話で恐縮です日記 (新潮文庫)

ビロウな話で恐縮です日記 (新潮文庫)

 

 

 





事なかれ主義と子どもの成長

今年の夏は暑かった、とまだ過去形にできないようで残暑もきついとの長期予

報が出ています。子どもを預かる学校現場は気が気では無いでしょう。特にこ

れから運動会が予定されているところなど、健康安全対策に余念が無いことで

しょう。誠にお疲れ様です。

 

ところで、今組体操はどれぐらいの割合で小学校で運動会種目として残ってい

るのでしょうか。ご承知の方も多いでしょうが、体育のカリキュラムに組体操

はありませんから、授業で行う必要がないものです。ですからもちろん、運動

会でも。しかし、学校では、カリキュラムにないものでも行事として実施する

ものも多いのです。私は、組体操否定派ではなく肯定派です。組体操がフェー

ドアウトしてきているのは、大きな事故が多発したことがあったからです。

 

学校は、「もし、事故が起きたらどうするのだ」という言葉に弱いです。なに

せ、子どもの体と命を預かっているわけですから。そこで事なかれ主義がはび

こります。「よかれと思ってやっていることを批判されたら割に合わない」そ

ういった風潮が流れることを懸念します。特に、若い先生方の間に。昔は、学

校や先生がやろうとしていたことを保護者が陰に日向に後押ししてくれたもの

です。ですから、自分たちにゴーサインを出せた。しかし現代は、今そこにあ

る危機感を考えてしまう。そうすると躊躇してしまう。たしかに、昔と違って

今の子の体力、持久力、耐性のなさは驚くほどです。それは、体力テストの数

字をいっているわけではありません。別の言葉で言うと、生命力と言っていい

かもしれません。

 

先ほど、組体操を例に出しましたが、下で支える子も、真ん中で均衡を保つ子

も、一番上でバランスをとる子も、一人はみんなのために、みんなは一人のた

めにを合い言葉に歯を食いしばる姿は感涙ものです。そういったみんなで作り

上げる成就感や達成感がなければ、なんのための教育か学校かと思ってしまい

ます。今年は、暑さ対策とやらで、運動会の半日実施の学校が増えるのでしょ

うか。その内容も、練習をあまり必要としない徒競走や集団競技ばかりで団体

演技などはあるのでしょうか。もしそうだとしたら、これからの子どもたちの

成長のために大きな損失になってしまう気がしますがいかがなものでしょう。

手巾と手紙

芥川龍之介サマセットモーム、両方とも短編の名手として人口に膾炙してい

ます。今回は、主題の違う2つの作品ではありますが、共通する何かがあると

思い俎上に載せました。

 

まず芥川龍之介の手巾。大学教授の主人公の元にかつての教え子の学生の母親

が訪ね、闘病の末、亡くなったとのこと。息子の死を語っているにもかかわら

ず柔和な微笑みをたたえている婦人を主人公はいぶかしんだ。

その時、先生の目には、偶然、婦人の膝が見えた。膝の上には、手巾を持った手が、のっている。(中略)先生は、婦人の手が、はげしく、ふるえているのに気がついた。ふるえながら、それが感情の激動を強いて抑えようとするせいか、膝の上の手巾を、両手で裂かないばかりにかたく、握っているのに気がついた。(中略)婦人は、顔でこそ笑っていたが、実はさっきから、全身で泣いていたのである。

 

次に、モームの手紙。

主人公の妻が主人公の友人と不倫関係にあり、その果てに妻がその友人を射殺

したことを告白する。

「彼が倒れたので、体の上に覆い被さるような形で、発砲し続けました。ピストルがカチッと鳴り、もう弾のないのに気づきました。」(中略)顔はもはや人間のものではなかった。残忍さと憤怒と苦痛とで歪んでいた。物静かな、淑やかな婦人が鬼のような情念を抱きうるなんて誰も思わなかっただろう。(中略)婦人の顔は徐々に正常に戻りつつあった。(中略)口元には愛想のいい微笑みがこぼれんばかりだった。育ちのいい、高貴でさえある婦人に戻ったのだった。「ドロシー、今行くわ。お手間とらせて申し訳ないわね。」<行方昭夫 訳>

 

女ごころのすごさというか、恐ろしさを描いていてどきどきします。私など、

すぐに顔に出てしまいごまかしがきかない方なので、こういう芝居がかったこ

とはできません。男は概してそうかもしれませんね。男女ということで一般化

しては、いけないのかもしれませんが。しかし、それぞれの作品のテーマの一

つ(あくまで一つです)が、女性の情念の強い表れ方を描写したことは確かな

ことでしょう。そういったことから、この2つの作品は実に演劇的であって、

まるで女優がそこで演技をしているような錯覚にとらわれます。いずれにせ

よ、印象的な作品です。

 

 

 

手紙 (角川文庫クラシックス)

手紙 (角川文庫クラシックス)

 

 

体験って大事だよね

昨日テレビを見ていたら、ジャニーズの国分太一二宮和也の二人がカブトム

シを捕まえる番組をやっていました。私は、個性的なキャラを持つ二宮君が大

好きで、彼の出ている番組は良くチェックしています。この番組で初めて、二

宮君が虫を触れないと言うことがわかりました。虫を怖がる彼は、冷や汗をか

きながらそれを克服しようと頑張っていました。そんな姿を見て、ますます好

感が持てました。

 

ところで彼は、今30代。この年齢で、彼のように虫が苦手でカブトムシが触

れないという人は多いのでしょうか。決して、批判や皮肉を言っているわけで

はありません。私は、50代後半で子どもの頃には、いろいろな昆虫を捕獲す

ることができた環境にあったため、触ることにためらいはありません。さすが

にゴキブリは素手ではだめですが。でも時代が変わり、昆虫も少なくなり、捕

まえる機会が無くなってくれば、苦手意識も生まれるでしょう。二宮君の場合

どうなのかはわかりませんが、結局は慣れなのではないでしょうか。

 

変な言い方ですが、物事の認識の欲求の要素に「触る」は、絶対入っていると

思うのです。たとえ触れなくても、触ってみたいと思う好奇心は未知のものへ

のあこがれから出るものだと思うのです。もし、最近の若い人たちが触ってみ

たいと思わなくなってきたとすると、それはちょっと困った事なのかもしれま

せん。私が言いたいことは、直接体験の大切さです。デジタル化が進み、疑似

体験がいくらでもできるような世の中になってきました。今時代は3Dから

4Dと言われるくらいです。でも、当たり前なことですが、結局ヴァーチャル

でしかないのです。

 

IC化が進み、今の子どもたちは、優れたパソコンソフトで知識や技能を身につ

けられる環境にあります。でも、そこには動物にかまれる痛みはありません。

虫を死なせてしまう悲しみもありません。友達と汗を流して作り上げる喜びや

人のために尽くしたときの幸福感もありません。

 

でもでも、ここまで書いていて気がつきました。私たち大人は、子どもたちに

体験させられるツールやスキルを持っているのだろうかと。そう考えると、

ちょっと怖くなってきました。

学校アップアップ

過日、テレビで2020年度から学校でプログラミング教育が導入されるにあ

たってそれに特化された塾の様子が紹介されていました。新学習指導要領の実

施に当たり、外国語(活動)の時数が増加します。子どもたちは、アップアッ

プ状態にならないかなと思ってしまいます。それ以上に、先生方が飽和状態だ

と思います。

 

確かに今、世の中は日進月歩の進化を遂げ、新たなスキルやツールを持ってい

なければ、これからの時代日本は生き残っていけないことはわかります。です

から未来を担う子どもたちに、様々な力をつけさせたい、あれもこれもと言う

気持ちはわかります。いろいろな新しい内容の学習活動が増えてきています。

総じて見ると、それはプレゼンテーション能力、企画創造能力であるような気

がします。それは企業戦士育成のためのようにしか思えません。

もちろんそれ自体を否定するものではありませんが、子どもの頃はもっとダイ

レクトな鍛え方、それも友達同士の絆を養える場であってほしいと思います。

 

授業時数が増えると言うことは、何かが削られると言うことです。矢面に立た

されるのは、各種行事です。これも、ニュースで報道されていましたが、運動

会が半日で終えてしまう小学校が増えているとのこと。理由は、保護者や地域

の事情、学校の事情のようですが、このようなことはこれから加速していくと

思います。遠足や社会科見学が学校の文化祭がはてまた修学旅行や体育的行事

が縮小、消滅することもあながち冗談ではなくなるかもしれません。思い起こ

せば、そういった行事で友情や団結、チームワークを覚え、集団で作る、行動

する達成感を味わったのだと思います。仲違いやけんかをしながらも、そこで

得たものは、一生ものの宝になったことを私たちは知っています。そういった

機会が少なくなってくるこれからの子どもたちのことを考えるとなんだかかわ

いそうに思えてきます。私たち大人は、うしろからがんばれと子どもたちと

教える先生方に声援を送るしかないのですね。

イエス:危機

タイトルに書くと、キリスト教なのかプログレッシブバンドかよくわかりませ

んね。もちろん、これまでの流れで後者の方です。私のイエスの初体験は、高

校時代友達が貸してくれた「危機」のレコードによってでした。ロジャー

ディーンのイラストとジョンアンダーソンのハイトーンボイスでいっぺんに魅

了されてしまったことを思い出します。内ジャケットに描かれた幻想的な絵

が、世界の果てをイメージしているようで、ずっぽりと浸ってしまいました。

この頃のイエスがある意味最盛期だったといえるでしょう。ところで、この時

代のプログレッシブロックの邦題の付け方は秀逸ですね。Close to the edgeを

危機とした感性には脱帽です。歌詞の日本語訳を読むと、相変わらず何を言っ

ているのかよくわからないジョンアンダーソンの作品だなと。直訳すると先端

の近くとなるのでしょうが、文脈からしても内容がよくわかりません。でもい

いんです。世界の果てにあるのがなんであれ、そこに不安定さがあるのは当た

り前なことなのですから。ここまで、このアルバムのことを述べてきたので、

最後まで「危機」のみでいきたいと思います。このアルバムは、何度もリマス

ター化され、その都度買っていた覚えがあります。タイトル曲が川のせせらぎ

の音で始まり、終わるという構成です。終わりのせせらぎはゆっくりとフェー

ドアウトしていきます。あるとき、ヘッドフォンで聞いていて、その箇所に来

たとき、フェードアウトの終わりが若干早いCDがありました。ほんの数秒の

話ですが、聞いてる方はショックでした。平和を象徴する川のせせらぎがオー

バーに言えば途中でカットアウトされたのですから。うーむ、危機かぁ、と

思ったものです。どの時代のどのリマスターかは、定かではありません。その

他のCDは、すべて違和感のないフェードアウトで終わっているので、カット

ミスなのかもしれません。意図的ではないにしろ、とても興味深く思ったもの

です。最後に蛇足です。A,B,W&Hの来日公演に行ったとき、運良く最前列で、

ジョンアンダーソンと握手する機会がありました。大きく、温かい掌でした。

 

危機

危機

 

 

 

ジェネシス

前回のEL&Pに続いて、プログレ特集です。

世のジェネシスファンは、7:3位の割合でピーターガブリエル在籍時の前期

の方が、フィルコリンズがボーカルをとる後期よりも評価が高いのではないの

でしょうか。私のジェネシス体験は、幻惑のスーパーライヴ(seconds out)で

したから、ピーターガブリエル絶対主義ではありません。ただ、先のライブで

好みの曲がピーター在籍時に作られたものであることから、どんどんのめりこ

んで言った記憶があります。

 

私にとってジェネシスは、2人のボーカルのどちらが、というよりもキーボー

ドのトニーバンクスがいればよかったのです。あの地を這うような荘厳で、叙

情的な音がした時に、ああジェネシスだなと思うのです。Firth of Fifth や

Cinema show そしてRippleで聞かれるようなピアノの音色のアルペジオが何と

も心地よいのです。トニーは、ソロからプロジェクト、映画、現代音楽まで幅

広くアルバムを出しています。でも、私の思うトニーは、ファーストアルバム

のIt's a curious feeling だけです。ファンというものは勝手なものです。どう

しても、ジェネシスで聞こえるあの音を求めてしまいます。今、ジェネシス

休業中(正式に解散したのでしょうか)なので、トニーの新しい作品は、クラ

シックレーベルNaxos から発表されています。あくまでクラシックの作曲

者としてクレジットされており、あの流麗なキーボードが聞かれるわけではな

いので、先ほどの一連のソロ作品の一つと意固地なファンの私は思っていま

す。最後に私が好きなアルバムを5枚です。

①怪奇骨董音楽箱②月影の騎士③トリック オブ ザ テイル④幻惑のスー

パーライヴ⑤そして3人が残った

あえて日本語盤のタイトルで書きましたが、改めて読むとなかなか日本語訳が

いいですね。EL&P同様、編集CDを作ってみましょうか。蛇足ですが、80分

に収めるように選曲するために取捨選択するのは、本当にその時の気分が出ま

すね。

 

セカンズ・アウト(眩惑のスーパー・ライヴ)(紙ジャケット仕様)

セカンズ・アウト(眩惑のスーパー・ライヴ)(紙ジャケット仕様)